ざっくりわかる「セマフォ」

セマフォって聞いたことある?
組み込み機器のソフト開発をしていると、ときどき出てくる「セマフォ」という言葉。
「なんか難しそう」「OSの話?通信の話?」と感じた人も多いのではないでしょうか。
実はこの「セマフォ」、
- 組み込みソフトのタスク管理の場面でも、
- 通信(RS232Cなど)のハンドシェイク信号の場面でも、
どちらでも登場する言葉なんです。
「え?同じ言葉で違う意味なの?」
「それとも、実はつながってる?」
今回の記事では、そのモヤモヤをスッキリさせるために、
**セマフォが何をしている仕組みなのか、ソフトと通信でどう違うのか?**を整理していきます。
セマフォって、ソフトでも通信でも同じなの?

ざっくり言うと:やってることはほとんど同じです!
「セマフォ」という言葉は、
- 組み込みソフトのタスク制御の話でも、
- 通信プロトコルのハンドシェイク信号の話でも
どちらにも登場します。
それぞれ使い方は違って見えますが、
本質的にやっていることはどちらも同じ。
🧠 共通していること
✅ “順番を守らせて、ぶつからないようにする”仕組みです。
❗ じゃあ何が違うの?
比較 | ソフトのセマフォ | 通信のセマフォ |
---|---|---|
調整する相手 | 同じ機器内のタスクや割り込み | 外部の通信相手(別の機器) |
調整の方法 | 変数やOSの仕組み(内部処理) | 信号線を使ったやりとり(外部通信) |
つまり、
目的は同じ。違うのは「場所」と「やり方」だけ。
なんです。
セマフォは「いま使っていいか?」を確認するための“旗”や“合図”。
ソフトではプログラム内で、通信では機器同士でその旗を振り合ってるだけ。
それぞれどう使われているか、違いをもっと詳しく知りたい方へ
ここからは、
- ソフトウェアの中でどうやって「順番待ち」が行われるのか
- 通信ではどんなふうに信号を使ってやりとりしているのか
を具体的に分けて紹介していきます!
ソフトウェアにおけるセマフォ:リソースの「順番待ち」係
組み込みソフトの中では、複数の処理(タスクや割り込み)が
同じ場所(リソース)を同時に使おうとして、バグが起きることがあります。
たとえば:
- 通信処理とログ処理が、同じ送信バッファにデータを書き込もうとしたら?
- センサー処理と表示処理が、同じ変数を同時に更新しようとしたら?
👉 結果:データが壊れたり、処理が飛んだりして不具合発生!
🛑 そこでセマフォの出番
セマフォは、**「今このリソースは誰かが使ってます!他の処理は待ってて!」**という旗のような役割をします。
- タスクA「セマフォ空いてる?」
- 空いていれば「セマフォ取得」→ リソース使用開始
- タスクA「使い終わったからセマフォ返す」
- 待っていたタスクBがセマフォを取得して、処理に入る
🎯 セマフォを使うことで…
- リソースの同時アクセスを防げる
- 順番がきちんと管理される
- マルチタスク環境でも処理が安全に進む
組み込みソフトでは、RTOSの機能として使うことが多く、
セマフォの仕組みを知らずに「なんか使ってる」状態になってる人も多いけど、
実はすごくシンプルな**「順番待ちの旗」**なんです。
通信におけるセマフォ:「送っていい?」を確認する信号たち
ここでは、RS-232Cのようなシリアル通信で登場する「セマフォ」を見ていきます。
ソフトと違って、相手は外部の機器です。
🤝 通信では“旗”を信号線でやりとりする
たとえば、機器Aと機器Bでデータを送る場合、いきなり送ると
「まだ受ける準備できてないよ!」
「重なってデータが壊れた…」
という問題が起こることがあります。
それを防ぐのが、RTS(Ready To Send)やCTS(Clear To Send)といった
「セマフォ信号」と呼ばれるハンドシェイク信号です。
🔄 通信セマフォのやりとりの流れ
- 機器Aが「RTS」をON(=送る準備できた)
- 機器Bが「CTS」をON(=受ける準備できた)
- 機器Aがデータを送信!
このやりとりによって、通信の衝突やデータ破損を防いでいるんです。
🎯 ポイント
- やってることはソフトと同じ(衝突防止)
- ただし、やりとりは信号線を使って外部の相手と行う
busy信号との違いは?
セマフォ信号とよく似た存在として、「busy信号」という言葉もあります。
こちらも通信機器の制御に使われる信号ですが、実はセマフォ信号とは性格がちょっと違います。
🚦 busy信号は「いま使えません!」という一方的な通知
- 機器が自分の状態を相手に知らせるための信号
- たとえば「まだ前の処理が終わってない」「バッファが空いてない」など
- 相手はその信号を見て、送信を控えるか判断する
つまり、「今ムリ!送らないで!」という一方通行の合図です。
🤝 セマフォ信号は「お互いに確認する」やりとり
- 「送っていい?」(RTS)→「いいよ!」(CTS)という双方向のやりとりがある
- お互いに状態を確認してから通信を開始する
- 衝突を未然に防ぐための“確認付き”の仕組み
🔄 ざっくり比較するとこう!
項目 | busy信号 | セマフォ信号(通信) |
---|---|---|
主な意味 | 今は処理中/使用不可 | 通信可能かどうかの事前確認 |
やりとりの方向 | 一方通行(状態通知のみ) | 双方向(ハンドシェイク) |
制御の流れ | 相手が勝手に判断して待つ | 双方で合意を取ってから通信開始 |
📝 イメージで言えば…
- busy信号 → 「赤信号」:とにかく止まって!
- セマフォ信号 → 「アイコンタクト」:渡っていい?→OK!→今行くね!
✅ それぞれの“強み”を整理してみよう!
それぞれのメリットを比較してみると以下のようになります。
比較ポイント | busy信号の利点 | セマフォ信号の利点 |
---|---|---|
シンプルさ | 一方的に伝えるだけなので仕組みが単純 | 状態をやりとりするため安全性が高い |
実装の容易さ | ハンドシェイクが不要でハード構成が簡単 | 双方向制御で通信のタイミング調整がしやすい |
処理の軽さ | 信号のON/OFFだけで済むので処理が軽い | 一度の送信ミスが少なく、再送が減る=トータルで効率的 |
応用のしやすさ | 単純なステータス表示として他用途にも応用しやすい | プロトコルに組み込むことで高信頼通信が可能 |
busy信号は「シンプルでお手軽」な方法
セマフォ信号は「手間はかかるけど安心・安全」な方法。
目的や環境に応じて、適切な方式が選ばれているんです。
まとめ:「セマフォ」って、場所が違うだけでやってることは同じ
「セマフォって結局なんなの?」という疑問に対して、
ここまで見てきたように、**通信でもソフトでも“順番を守らせるための仕組み”**であるということがわかりました。
✅ 最後にざっくり整理!
用語 | どんな仕組み? | イメージ |
---|---|---|
ソフトのセマフォ | タスク同士でリソースを取り合わないようにする内部の「順番待ち制御」 | リソース前に並ぶ順番待ちの旗 |
通信のセマフォ信号 | 機器同士で「送っていい?」「OK!」と確認し合う信号(ハンドシェイク) | 手を挙げて合図しながら渡る横断歩道 |
busy信号 | 機器が「今ムリ!」と一方的に伝える信号。相手は見て判断するだけ | 赤信号のような一方的な通知 |
🧠 視点を変えればどれも
「ぶつからないようにするための合図」
違うのは、
- 内部でやってるか(ソフト)
- 外部とやりとりしてるか(通信)
- 確認付きか(セマフォ)一方通行か(busy)
この違いだけなんです。
💬 セマフォという言葉を見かけたら、
まずは「この文脈では誰と順番調整してるのかな?」と考えてみましょう。
それだけで、意味の違いに戸惑わなくなるはずです!